リザーバー研究会

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リザーバとは

リザーバーは体内に薬剤を注入する管(これをカテーテルと言います)に接続してカテーテルの端を皮下に埋め込むための器具です。カテーテルは体内の目標とする部位に薬剤を注入する場合にしばしば用いられますが、繰り返し薬剤注入が必要な場合には、このカテーテルを留置しておく必要があります。この時、カテーテルの末端(薬剤を注入する側)が体の表面に出ていると、煩わしいばかりでなく、感染や出血などさまざまなトラブルの原因となります。そこで、このカテーテルの末端全体を皮下に埋め込んで、カテーテル留置による煩わしさやトラブルをなくし、かつ計画的に反復して治療を行うためにリザーバーが用いられます。



リザーバーには種々の大きさ、形のものがありますが、500円硬貨ほどの大きさの「空飛ぶ円盤」のような形状をしたものが一般的であり、これが体内に留置されたカテーテルに接続して皮下に埋め込まれます。リザーバーの天井部分には注射の針を刺せる部分があり、また内腔がカテーテルの内腔につながっているため、皮膚の上からリザーバーに針を刺しすことで薬剤の注入が行える訳です。



リザーバーはさまざまな目的で留置されたカテーテルに接続して使用されますが、動脈や静脈などの血管に留置されたカテーテル、あるいは腹腔に留置されたカテーテルと接続しての使用が代表的なものと言えます。なお、リザーバーは生体適合性のある素材によりできているため半永久的に体内に留置することが可能ですが、注射針を刺す部分はシリコンゴムでできているため、使用回数が非常に多い場合(通常1000-2000回)には交換が必要になる場合があります。



現在リザーバーは、米国で年間約10万個、ヨーロッパで8万個、日本で1万個が使用されており、カテーテルを留置して行う治療においては全世界で広く用いられています。



中心静脈ポート

中心静脈は、上半身あるいは下半身の血液が心臓(右房)に戻る過程で合流し、上大静脈あるいは下大静脈となって、右房に注ぎ込む部分をさします。

この部分は、末梢血管に比べ血管が太く、また、大量の血液が流れているため、注入した薬剤により血管壁が刺激を受けにくいという特徴があります。

このため、中心静脈は、刺激性の強い薬剤や、薬剤の連続的な投与、あるいは大量の輸液などに適しています。

しかしながら、中心静脈を直接穿刺することはできないため、この部位に薬剤を注入するためには中心静脈までカテ-テルを挿入する必要があり、薬剤投与を繰り返し、あるいは長期に行うためには、中心静脈に留置されたカテ-テルにポートを接続して、すべてを皮下に埋没した形で使用されます。


一般には、この中心静脈に挿入されたカテ-テル、ならびにこれと接続されて埋没されたポートとを総称して、中心静脈ポートと呼ばれています。

動注化学療法

化学療法は腫瘍に対する抗がん剤や細菌感染に対する抗生物質などによる薬物療法をさしますが、このような化学療法の中でも、特に高い濃度の薬剤を目的とする病巣に作用させることが必要な場合があります。代表的なものががん病巣に対し抗がん剤を投与する場合で、もしがん病巣が体のどこか一部に限局していて、この部位にのみ抗がん剤を投与することができれば、当然がんに対する効果が高まり、かつ全身的な副作用が少なくてすむことが期待できる訳です。抗がん剤の場合には静脈からの全身投与に比べ数倍から数十倍の局所濃度が得られ、これは骨髄移植などを併用して行われる超大量全身化学療法に比べても遥かに高い濃度であることが知られています。このような目的で、限局した病巣に、この病巣に血液を供給している動脈から直接薬剤を投与する治療法が動注化学療法です。


動注化学療法は全身のさまざまな臓器に対し行われますが、カテ-テルを留置できる血管がありリザーバーを用いて治療を行うことのできる臓器は限られているため、顔面、頚部、四肢、肝臓、骨盤内臓器などが主な治療対象となっています。しかし、動注化学療法の効果は原則として、この治療対象とされた臓器に限られますので、病巣が全身各所にある場合には、特殊な場合を除き動注化学療法は行われません。


なお、動注化学療法が広く行われているがんに対する化学療法の場合にも、その治療の目的が長生きや治癒を目的にするものなのか、症状を和らげるためのものなのかなどにより当然役割が変わってきますが、動注化学療法をどのような時にどのように利用するかについては、未だ必ずしも科学的な根拠に基づいた判断が下されている訳ではありません。このため、まだ研究的な側面をもった治療法であると言えます。


また、動注化学療法は高濃度の薬剤を目的とする部位に集中的に投与しようとする治療法ですから、薬剤を正しく注入するための技術が極めて重要です。特に抗がん剤の場合には目的以外の部位に薬剤が流入すれば強い副作用が出現することもあり注意を要します。このため、この治療は十分に経験のある医師により行われる必要がり、この点では特殊な治療法であると言えます。


腹腔内化学療法

化学療法は腫瘍に対する抗がん剤や細菌感染に対する抗生物質などによる薬物療法をさしますが,このような化学療法の中でも,特に高い濃度の薬剤を目的とする病巣に作用させることが必要な場合があります。代表的なものががん病巣に対し抗がん剤を投与する場合で,もしがん病巣に集中的に抗がん剤を投与することができれば,当然がんに対する効果が高まり,かつ全身的な副作用が少なくてすむことが期待できる訳です。


腹腔内化学療法は,腹腔すなわち「胃や腸,肝臓や子宮,卵巣といった臓器を収めているお腹の中」に直接薬剤を注入して,腹腔内の薬剤濃度を高め,この中の病巣に対する治療効果を高めようとするものです。この場合,薬剤がこれらの臓器の中に深く浸透する訳ではありませんので,特にその表面や腹膜などに存在する病巣への治療が主となります。また,腹腔内化学療法では,その対象となる疾患や使用される薬剤によっては,投与された薬剤の一部は腹膜から吸収されて全身に回り全身的な効果をあげることから,静脈注射と同様の全身投与のための薬剤の入り口として腹腔を利用し,腹腔内病巣に対する局所効果と腹腔以外の部位の病巣に対する全身化学療法を同時に行う手段として用いられる場合もあります。このような治療法は,特に婦人科がんの治療において広く用いられています。


なお,腹腔内化学療法においては,原則として腹腔内全体に薬剤が行きわたるよう,薬剤を水で薄めて投与することがあり,この水を治療後に回収したり,腹腔を洗浄した水を調べたり,さらにはこの治療を外来通院で繰り返し行う上でカテ-テルとリザーバーの留置が汎用されています。


インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは

病気は患者さん自身の重大な問題ですから、この病気について知り、またこれに関わる検査や治療法を決定する権利は患者さん自身にあります。しかし、決定する権利があると言っても、病気やこれを診断するための方法、治療の内容は大変複雑ですので、突然病気を患った患者さんがこれらを正しく理解して、ご自分で判断、決定することは容易ではありません。このため、患者さんが正しい情報に基づいて、ご自分の病気や検査、治療の内容を十分に理解し、その上で判断、決定ができるよう、医療チーム(医師、看護師、薬剤師など)が病気とその検査や治療について、わかりやすく説明する必要がある訳です。このように、医療チームが病気や検査や治療についての正しい情報を患者さんに提供し、患者さんがこれらを正しく理解した上で、ご自分が受ける医療の内容を決定する過程をインフォームド・コンセントと呼びます。これにより、患者さんは、患っている病気がどのようなものなのか、検査や治療にはどのようなものがあり、何故必要なのか、効果はどうなのか、副作用はどうなのか、治療しない場合にはどうなるのか、といったことを何でも自由に納得がいくまで質問し説明を受け、その上で検査や治療を選択したり,同意したり,拒否したりすることができます。


インフォームド・コンセントは"説明と同意"という訳語が使われることもありますが、単なる説明ではなく、「十分に理解、納得して」という意味が含まれるため、近年は"インフォームド・コンセント"と表記されることが多くなっています。英語では"informed consent"という言葉のほかに、"informed decision" ,"informed choice", "shared decision"という呼び方も使われています。


インフォームド・コンセントの歴史

1946年,第二次世界大戦中のナチスの非人道的な人体実験に対してニュルンベルグ裁判が行われたのをうけて,1949年に医学研究の対象となる患者さんの人権に言及した「ニュルンベルグ倫理綱領」が採択されました。


1964年,世界医師会は医学研究にかかわる患者さんの人権擁護を目的とした「ヘルシンキ宣言」を採択し、1975年には,インフォームド・コンセントが不可欠であると明確にした改正案が採択されました。この「ヘルシンキ宣言」は,その後数回にわたって改正が行われていますが,医学研究だけではなく医療行為全般にわたる倫理的指針として用いられています。


1978年,世界保健機構(WHO)は,患者さんは自分の医療の計画と実施に参加する権利があるとする「アルマ・アタ宣言」を採択しました。さらに、 1981年,世界医師会は「患者の権利に関するリスボン宣言」を採択しました。これらを踏まえて,諸外国で,インフォームド・コンセントを含む”患者の権利”が立法化にむかっています。


日本では,1980年代後半ころからインフォームド・コンセントの概念が用いられるようになり,1990年に日本医師会の生命倫理懇談会より「「説明と同意」についての報告」が公表されました。1997年,医療法の改正が行われ,インフォームド・コンセントが医療者の努力義務として盛り込まれました。


臨床試験について

より良い治療を目指して考案される新しい治療法も、それが患者さんにとって本当に有用であるかを判断するためには、実際の臨床の場でこの治療を行い、その効果や安全性、有害性などをさまざまな観点から科学的に検討し評価することが必要です。このように研究的な目的で行われる医療行為が臨床試験で、すでに確立した標準的治療を行う一般診療とは区別されています。

現在進行中の臨床試験

登録日 試験簡略名 実施責任組織 UMIN
-CTR
対象疾患名 試験進捗状況 試験問い合わせ窓口
2016/03/16 進行肝細胞癌患者を対象とした肝動注化学療法の有用なレジメンを検討するランダム化第II相比較試験 金沢大学附属病院 閲覧
肝細胞癌 限定募集中 金沢大学附属病院
2016/02/04 大腸癌肝転移に対する肝動注療法の実態調査 リザーバー研究会 閲覧
大腸癌肝転移 限定募集中 愛知県がんセンター中央病院
2015/11/01 進行肝癌に対するDSM併用HAIC 山口大学医学部附属病院 閲覧
進行肝細胞癌 限定募集中 山口大学大学院医学系研究科
2015/03/12 抗がん剤IVナース導入後の患者満足度調査 兵庫県立がんセンター 閲覧
悪性腫瘍患者 開始前 兵庫県立がんセンター
2014/08/15 中心静脈ポート採血方法の最適化を検討する臨床試験 神戸市立医療センター中央市民病院 閲覧
固形癌 試験終了 神戸市立医療センター中央市民病院
2014/11/22 ソラフェニブと肝動注併用療法の有用性の検討 鳥取大学医学部 閲覧
肝細胞癌 限定募集 鳥取大学医学部
2014/09/10 進行肝癌に対する高用量CDDP/5-FU動注化学療法の臨床第I相試験討 慶應義塾大学医学部、一般・消化器外科 閲覧
肝細胞癌 一般募集中 慶應義塾大学医学部部
2014/04/16 進行肝癌に対するCDDP+5-FUを用いたHAICの臨床第I,II相試験 札幌医科大学医学部 閲覧
肝細胞癌 一般募集中 札幌医科大学医学部
2013/12/20 ソラフェニブ先行TACE療法 慶應義塾大学医学部 閲覧
肝細胞癌 限定募集中 慶應義塾大学医学部
2013/10/18 腫瘍栓に対する放射線治療および肝動注化学療法の併用 広島大学病院 閲覧
肝癌 開始前 広島大学病院
2013/10/15 肝癌治癒切除再発高危険群に対するaduvant CDDP TAIの有用性に関する臨床研究 広島大学病院消化器・代謝内科 閲覧
肝細胞癌 限定募集中 広島大学病院
2013/07/01 S-1+GEM肝動注化学療法第I相試験 金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科 閲覧
膵癌術後肝転移 試験終了 金沢大学附属病院
2013/04/05 高度脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌に対する肝切除術と術後肝動注化学療法の有用性に関する臨床研究(KHBO1207) 関西肝胆道癌治療グループ(関西HBO) 閲覧
肝細胞癌 限定募集中 大阪大学大学院医学系研究科
2012/11/06 Child-Pugh score 8、9の進行肝細胞癌に対するアイエーコール動注療法の有用性 広島大学病院消化器・代謝内科 閲覧
進行肝細胞癌 限定募集中 広島大学病院
2012/10/11 HICS 55 広島大学病院消化器・代謝内科 閲覧
進行肝細胞癌 一般募集中 広島大学病院
2012/07/31 進行肝細胞癌に対するSorafenib+CDDP分割動注併用療法の第II相臨床試験 関西医科大学附属枚方病院 閲覧
肝細胞癌 参加者募集中 関西医科大学附属枚方病院
2012/06/25 肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法前におけるシスプラチン併用肝動注化学療法(CDDP-TAI)の再発抑制効果に関する無作為化比較試験 杏雲堂病院 閲覧
肝細胞癌 限定募集中 杏雲堂病院
2012/02/25 胆管癌に対するPEGIFN/5-FU療法 岩手医科大学 閲覧
肝内進行胆管細胞癌 一般募集中 岩手医科大学
2012/02/01 PVTTを伴うHCCに対するCDDPを用いた動注化学放射線療法 神戸大学医学部附属病院 閲覧
門脈腫瘍栓合併肝細胞癌 開始前 神戸大学医学部附属病院
2011/09/01 進行肝癌に対する肝動注化学療法 山口大学医学部第1内科 閲覧
進行肝細胞癌 一般募集中 山口大学医学部
2011/07/01 進行肝細胞癌に対するIFN併用CDDP・5-FU肝動注化学療法の治療感受性因子の探索 福井大学医学部 閲覧
進行肝細胞癌 一般募集中 福井大学医学部
2011/06/01 MRP3由来ペプチドを用いた肝細胞がん動注化学療法 金沢大学附属病院消化器内科 閲覧
肝細胞がん 参加者募集終了-試験継続中 金沢大学附属病院
2010/06/01 iPocc Trial 一般社団法人北関東婦人科がん
臨床試験コンソーシアム(GOTIC)
特定非営利活動法人婦人科悪性
腫瘍化学療法研究機構(JGOG)
閲覧
上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌 参加者募集終了-試験継続中 iPocc Trial 研究事務局
2009/09/01 進行肝細胞癌に対するソラフェニブとペグインターフェロンα2a併用5-FU肝動注化学療法の無作為比較試験 杏雲堂病院 肝臓内科 閲覧
肝細胞癌 一般募集中 東京大学医学部附属病院
2009/07/14 進行肝細胞癌に対する動注化学療法同時併用粒子線治療 兵庫県立粒子線医療センター放射線科 閲覧
肝細胞癌 参加者募集中 兵庫県立粒子線医療センター
2008/05/01 肝細胞癌に対する術後CDDP動注の有効性評価 新潟肝細胞癌治療研究会 閲覧
外科的な治癒切除を受けた肝細胞癌症例 一般募集中 新潟肝細胞癌治療研究会
2007/08/31 ICC-CDDP 国立がんセンター東病院 肝胆膵内科 閲覧
肝内胆管がん 参加者募集終了-試験継続中 帯広協会病院